高圧ケーブルの絶縁抵抗値を測定
原則は1年に一回以上、電気設備を停電させて行う年次点検の際に、高電圧絶縁抵抗計を使って高圧ケーブルの絶縁診断を行います。
(画像はハイビット絶縁抵抗計 DI-11NS)

E接地方式による絶縁測定(一般的な絶縁抵抗測定)
高圧ケーブルの導体と対地(アース)間に高圧の直流電圧(5,000~10,000V)を印可し、絶縁抵抗値を測定します。
湿度の影響を強く受けるため、雨の日などケーブルが濡れている状態で測定すると極端に低い値になってしまい、正確な判定が出来ません。
なるべく、乾燥した晴れた日に行うのが理想的です。
G端子接地方式による絶縁測定(ガード接地法)
E接地方式でケーブル単体の絶縁抵抗値を測定するには、繋がっている機器(開閉器やVCT等)を切り離す必要がありますが、現実的には停電時間の制限などがあるため難しいです。
G接地方式で測定すると、ケーブルの絶縁体の抵抗のみを、接続された高圧機器類を外さずに高い確度で測定することが出来ます。
ただし、シースの絶縁抵抗値が低いと精度が悪くなるので、シースと対地間の絶縁値も測定します。
判定基準は表の通りです。
(絶縁物はケーブル心線と金属遮蔽層、シースは金属遮蔽層と対地間の絶縁抵抗)


絶縁診断についてさらに詳しく
良否判定手順例
①三相を一括してE接地方式で測定
- 高圧ケーブルと、高圧機器類の対地間の絶縁抵抗を測定する
(切り離せる機器は、なるべく切り離す。通常はDS又はLBSの1次側にラインコードのクリップを取り付ける。) - 5GΩの絶縁抵抗値が確認できればOK、測定対象内のケーブル及び、接続されている機器類の絶縁抵抗値もそれ以上であるため「良」判定で以降の手順は省略可。
②シースの絶縁抵抗測定
- ③のG接地方式で精度の高い測定するためには、ケーブル外皮となるシース層の絶縁抵抗が1MΩ以上必要なため測定して確認する。
- 極端に抵抗値が低い場合には、シース層の貫通による絶縁体への浸水を疑う必要がある。浸水していると水トリーの原因に。
③ 三相を一括してG接地方式で測定
- 高圧ケーブルの絶縁層のみの絶縁測定が可能で、大抵は100GΩ以上となる。
- この状態でケーブルもしくは、接続された高圧機器の不良部位が判明出来ないときは、分離作業を行い単独での測定を行う。
④一相(単線)でE接地方式で測定
- 分離作業を行い一相ずつ測定し、不良相を判定する。
精密診断項目
①弱点比
ケーブルの絶縁体内部の劣化や吸湿などを早期に発見する診断方法。
弱点比の考え方は、絶縁強度が十分である電圧範囲内であれば、オームの法則にしたがう電圧・電流・抵抗の関係性が、電圧の上昇に伴い測定電流が比例せずに先行し増大してしまうことに対して、判定を行うという事である。
このために試験電圧を第1ステップ(3,000又は5,000V)と第2ステップ(6,000又は10,000V)と2段階で測定を行う。
計算式は次の通りとなる。
弱点比=第1ステップ電圧の絶縁抵抗/第2ステップ電圧の絶縁抵抗値
判定基準は、
「良:1.0 以下」「注意:1.0 超過~2.0 以下」「要注意:2.0 超過」「危険:3.0 超過」
②成極比(成極指数)
電圧印可規定時間(高圧設備は10分)後の絶縁抵抗値と1分後の絶縁抵抗値の比。
健全な状態の高圧ケーブルであれば、高圧絶縁測定の試験中は測定値は上がっていくが、
水トリーが侵食しているケーブルだと、試験中に絶縁層(架橋ポリエチレン)の水トリー内の水分が揮発し、その水トリー跡には空気が入り込み気中(コロナ)放電状態となるために、徐々に絶縁抵抗値が下がっていくことが確認できる。(漏れ電流が増大していく)
成極比=10分後の絶縁抵抗値/1分後の絶縁抵抗値
判定基準は、「良:1.5 以上」「注意:1.0 超過~1.5 未満」
「要注意:1.0以下~0.5 超過」「不良:0.5 以下」
③キック現象の有無
水トリーが内在しているケーブルに、直流電流による試験を行うことで水トリー内の水分が電気分解され「キック現象」という電流突出が観察される。
ケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)に侵入した水分(水トリー)が原因で、この水分が消し飛ぶ(気中放電)瞬間に電流がスパイク状に急増するため起きる現象である。
絶縁抵抗の測定中はメーターの針の振れをよく観察し、急激に針が振れたりする事が無いかをチェックする。キック現象が確認できた場合はケーブルがパンクする恐れがある状態なので、早急に更新を検討する。
④相間不平衡率
相間の劣化状況の違いを確認する。
同一の材質、環境・年数におかれているケーブルが、各相に電気的絶縁値に差のないことを確認し、致命的な劣化に至っている場合には、事故相の判別を行うための試験となる。
計算式は次の通りである。
不平衡率=(三相の漏れ電流の最大値-最小値)/三相の漏れ電流平均値×100%
判定基準は、200%以上で不良となる。
この診断方法は、三線(芯)を個別で測定する必要があるので、VCT や VT 内蔵のPAS・UGS 等の開閉器が接続されたままの状態では適用できない。そのため通常は行わない。
高圧ケーブルの絶縁抵抗値が低いとどうなる?
高圧ケーブルの絶縁が低いと、地絡(漏電)による停電、機器の焼損事故、あるいは火災が発生するリスクが非常に高くなります。
絶縁低下の主な原因は経年劣化や水分侵入(水トリー現象)であり、高圧ケーブルが埋設で、常に水に浸かっている場合は要注意です。
更新推奨時期は20年~30年ですが、最近は更新推奨時期内でも地絡事故に至る不良ケーブル(Y社製)もあるので、まだ新しいからと油断できません。
電力会社等から電気を引き込んでいる高圧ケーブルで地絡事故が起きると、SOG制御装置の地絡継電器(GR)が動作し、高圧気中負荷開閉器(PAS)や地中線用負荷開閉器(UGS)を開放させます。
すると、構内は全て停電し、事故原因を除去するまでは電気が使えない状態となります。
特に最近は高圧ケーブルが品薄で、納期に数カ月かかる場合もあり、電気を使えるようになるまでに、かなりの期間を要することもあります。

工場は大損害、病院は人の命にかかわることも・・・
工場で停電が発生すると、生産ラインの停止による甚大な機械・製品被害、データ破損、出荷遅延、安全確保の停止など、多大な損害を招きます。
また、病院で停電が起きると、人工呼吸器や麻酔器、出産用の吸引器や心拍を図るモニターなど、電気によって動いている機器がすべてストップします。
たとえ手術中であっても、必要な電気や機械がすべて使えなくなるため、助かるはずだった患者さんの命も助からなくなってしまう可能性が高いです。
また、電子カルテが使えなくなったり、ワクチンや医療品を保管する保冷庫やフリーザーが停止したりと、広範囲にわたって問題が発生することが予想されます。


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